集合住宅での居住者間トラブルの一つに騒音問題があります。
解決が困難なこの問題は、時には裁判や事件にまで発展することもあります。
分譲マンションにおける騒音問題に、管理組合はどう対処すればよいでしょうか。
騒音問題は個人間の問題
まず理解しておきたいのは、騒音問題は個人間の問題であるということです。
管理組合にも管理会社にも、問題に対処する義務はありません。
管理組合と管理会社に相談しても、「当事者で話し合ってうまくやってください」と言われて終わりということになっても、なんら不思議はありません。
しかし現実的には、管理組合はマンションで起きている問題を見過ごしてはおけないでしょうし、管理会社も管理組合と良好な関係でいたいですから、何らかの対応をすることはあるでしょう。
何らかの対応はするかもしれないが積極的に解決を図る義務はない、被害者からしてみれば頼りないとも思えてしまうこの状況は、どこから来るのでしょうか。
管理組合と管理会社の立場
標準管理規約を参照します。
(理事長の勧告及び指示等)
国土交通省 標準管理規約(単棟型)及び同コメント
第67条 区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。
続いて、標準管理委託契約書です。(甲は管理組合、乙は管理会社)
(有害行為の中止要求)
国土交通省 標準管理委託契約書
第11条 乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。
一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
二 建物の保存に有害な行為
三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為
四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
五 組合員の共同の利益に反する行為
六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
共同の利益に反する行為があれば、管理組合も管理会社も行為を止めるよう求めることができます。「しなければならない」ではありません。
騒音問題の難しいところは、受け手側が騒音だと感じれば騒音問題となってしまうことなのです。
仮に上の階で騒音を発しているのが子供だとして、下の階に住んでいるのがその親であった場合に、親は騒音だとは感じないでしょう。
また上下階の住人同士で仲の良い関係が築けていれば、多少の音にも寛容になれることもあります。
発生している「騒音と思われるもの」が共同の秩序を乱し利益に反するかどうか、管理組合にも管理会社にもわからないのです。
注意喚起の文書を配付する、両者の話し合いの場を設けるという対応にとどめることとなってしまうのは、管理規約と管理委託契約から見ても仕方のないことです。
しかし管理会社も管理組合も対応してくれる望みが薄いからといって、最初から泣き寝入りをする必要はありません。
状況を他者にも伝えて共有しておくことは大切ですし、可能な範囲の対処で解決する場合もあるのです。
予防と対処
マンションには一定の遮音性能がありますが、音を完全に防ぐことができるものではありません。
音の大きさと種類によっては、空気中とコンクリートを伝わって他の住戸にまで及ぶことを居住者みなさんが理解しておく必要があります。
騒音問題が発生する前から、管理組合としてこのことを啓蒙(周知活動)していくとよいでしょう。
また問題が発生してしまってからも、騒音の発生元の人は自分が騒音を発していることに気が付いていないものです。
注意喚起の文書を配付する場合には、具体的にどのような音が迷惑となっているかを明記するべきです。
騒音を発生させていることを指摘されてもなお、自分のことと認めようとしない場合さえあります。
次の段階として理事会にできることは、中立的な立場で双方からの聞き取りを行うとともに、可能であれば近隣住戸の居住者からも情報も参考にして双方に伝えることです。
複数の住戸からも同様の苦情が出るようであれば、共同の利益に反する状況とも言えるわけです。
双方への話し合いの場を提供して歩み寄りが見られないのであれば、理事会としてできることはないでしょう。
騒音は感情的になりやすく、解決しにくい問題です。
マンションは共同生活の場であることを一人一人が理解して、未然に防ぎたいものですね。